日本最大級のVue.jsカンファレンスであるVue Fes Japanの運営は、世路庵がサポートしています。
主な支援内容
- 企画・運営統括コンサルティング
- 会場、飲食、映像、通訳など各種業者との契約・指揮
- 振込、経費精算を含む予算管理・会計処理
- その他、コアスタッフのさまざまな業務
本記事では、5年ぶりのオフライン開催となったVue Fes Japan 2023について、運営統括の視点から成功と失敗のポイントを詳しく分析します。最後には、今年開催予定のVue Fes Japan 2024の狙いについてもご紹介します。
Vue Fes Japanとは
Vue Fes Japanは、2018年に誕生した日本最大級のVue.jsカンファレンスです。文字通りFes=お祭りのようにVue.jsを共に盛り上げ、共に学び、そしてなによりも共に楽しむために誕生しました。
Vue Fes Japan 2023の3大成功ポイント
2023年10月28日(土)に中野セントラルパークカンファレンスで開催されたVue Fes Japan 2023には、大きく分けて3つの成功ポイントがありました。運営統括の視点で1つずつ掘り下げていきます。
1. 期待を上回る集客
技術カンファレンスで最も重要なことは、なによりも集客です。素晴らしいセッション、豪華なスピーカー陣、工夫を凝らしたスポンサーブースがあったとしても、参加者が少なければ意義が半減してしまいます。カンファレンスへの参加を通して広い層に良い影響を及ぼすことで、以下のような効果が期待できます。
- テーマや技術の業界内での地位確立
- オープンソースソフトウェアへの貢献者数の増加
- スポンサーや参加者のさらなる拡大
- コミュニティ活動の活発化
- 各社採用活動への好影響
- 国内外のエンジニア同士による交流拡大
特に今回は5年ぶりの開催ということもあり、「Vue Fes Japanを覚えているだろうか?」、「Vue.jsに興味を失った人もいるかもしれない」と、企画当初は様々な不安や懸念を抱いていました。
結果としてはスタッフやスピーカーを含め、587名のみなさんにご参加いただきました。2018年では450名だったことをふまえると、1.3倍以上の参加者増となりました。
運営側としては、Vue Fes Japanの復活を知っていただくための広報活動や、思わず参加したくなるような企画作りに力を入れてきましたが、成功の要因は1つではありません。
その中でも、Vue.jsコミュニティの情熱が及ぼした大きな影響は計り知れないでしょう。新型コロナウイルスの影響でミートアップや勉強会が困難だった期間でも、OSS本体だけでなく、関連ツールの開発や翻訳に地道に力を注ぎ続けてコミュニティを維持してきたみなさんには、敬意を表したいと思います。
2. フェスならではの参加体験
Vue Fes Japanは、名前の通りお祭り的な要素がコンセプトの1つです。単にスピーカーの話を聞くだけであれば、オンライン開催でも十分でしょう。わざわざ費用や時間をかけて会場に集まるのは前時代的だ、と考える人もいるかもしれません。
しかし、オフラインならではの体験があることは確かです。オープンソースソフトウェアのコントリビューターやスピーカーと顔を合わせながら直接話をしたり、初めて会った参加者、スタッフ、スポンサーで新しい繋がりができたり……これらはオフラインならではのメリットです。実際、開催後に実施したアンケートでも、印象に残ったこととしてほとんどの方が会場で感じた熱量の高さを挙げていました。
また、お祭りとして盛り上げるための企画も忘れてはいけません。人は感情が動いた時、対象への結びつきを強く感じたり、ポジティブな気持ちを抱いたりします。ただ楽しかった、だけで終わらず、新たな行動に繋がるためのきっかけになるカンファレンスを目指し、さまざまな企画を執り行いました。結果的に、みなさんからは新たなモチベーションが湧いた、という声を数多くいただくことができました。
3. 継続していくための黒字達成
大規模カンファレンスの運営は、スポンサー各社のご協賛・ご協力がなくては成り立ちません。アクセスの良い会場、海外スピーカーの招待、期待を裏切らない飲食……ご参加いただくみなさんの満足度を高めるには、とにかく費用がかかります。もちろん予算には限りがあるので、メリハリのある予算編成が重要になります。
その中で最も重要なのが、黒字化です。
Vue Fes JapanはVue.js日本ユーザーグループという非営利の任意団体が運営しています。よって、自身の出資額は限られ、企業主催とは違いスポンサー収入とチケット収入のみで予算を賄わねばなりません。赤字が出たときにカバーできる資金力も、残念ながら無いのが現状です。
そんな中、今回は黒字を達成することができました。繰り返しになりますがVue.js日本ユーザーグループは非営利団体ですので、繰り越し分は次回以降のカンファレンスや、ユーザーグループとしての活動に生かしていきます。
Vue Fes Japan 2023の3大失敗ポイント
良かったことだけではなく、反省すべきポイントもたくさんありました。細かいことを挙げていくとキリがないため、本記事では特に次回以降での改善を強く意識している3つに絞って振り返ってみます。
1. 映像・音声の準備不足・設備不備
1年近く入念に準備しましたが、それでも考慮漏れ・想定不足のことは起こりました。今回最も大きかったトラブルは、プロジェクターの映像が投影できなくなる、というものでした。
キーノートの冒頭で、プロジェクターがフッと真っ暗になったときの気持ちは、思い出したくもありません……。結論から言うと、会場側のHDMI入力端子の接触不良が原因でした。ケーブルが接続される角度によって、映像が出力されたり、消えたりを繰り返してしまう状況でした。当然、前日にリハーサルを実施し、問題がなかったことを確認しています。また会場自体も、他の勉強会などで過去に何度も利用したことがあり、同様のトラブルには遭遇したことがありませんでした。
それでもトラブルが起きるときは起きるものと考え、あらゆる想定をしておくことが大切な学びでした。例えば今回の例で言えば、プロジェクターへの入力系統、または投影環境をなんらかの手段で2系統確保しておく、などの対策が考えられます。
もう1つ、開場前に起きたトラブルがありました。今回、会場レイアウトの都合上、キーノートなど一部プログラムは2つの部屋に分かれて視聴していただく想定をしていました。具体的には、スピーカーには部屋Aでプロジェクターへの投影、講演を実施してもらい、その映像と音声を部屋Bに流す、という形です。
当日朝にその映像・音声の配線・設定を外部業者様に行っていただく、という前提で何度も打ち合わせしていました。しかし、当日になってやってきた業者の担当者(打ち合わせをした方とは別の方)からは「そんな作業は聞いていない」という衝撃の発言が……。頭が真っ白になりかけましたが、駆けずり回って他の業者様にケーブルをお借りするなどし、なんとか開演時間までに配線・設定を完了することができました。ちなみに結果的には担当者のコミュニケーションミスが原因だったと思われます。
前述した予算の不安から当日作業を選択したことが、結果的にトラブルの原因となりました。やはり、しっかり費用をかけるべき箇所には、惜しまずに費用を使うことが大切と言えます。
2. 会場の座席コントロール
Xやアンケートでいただいた不満の多くが、席数が少ない、立ち見でも入れなかった、というものでした。席数の準備不足となった原因は、以下の2つの理由です。
午前中の来場者数を適切に予測できなかった
2018年の初開催時も、2023年と同様で午前中にキーノート、午後からセッションというタイムテーブルでした。しかし蓋を開けてみると午前中の人手が案外少なく、席がだいぶ空いている印象となっていました。
午後からは参加者も増え、盛況となったのですが、このときに「Vue Fes Japanの参加者層は朝が苦手な人が多いのかも」と仮説を立てていました。今回、会場レイアウトを計画する際にも、午前中は人手が少ない可能性があるため、その前提で席数を決定していました。
実際には、今年は朝から本当に多くのみなさんにご参加いただき、想定を大きく上回ったため、かなり多くの方に立ち見をお願いする事態となってしまいました。
本来できるはずの席数コントロールができなかった
一般的なカンファレンス会場では、机の有無で設置できる席数が大きく変わってきます。今回の会場では、以下のように約1.7倍の差があります。
机ありの方がパソコンも使え、ゆったりと使える反面、席数は減ってしまいます。机なしにすると席数は増やせますが、少し窮屈な印象は否めません。よって今回は、デフォルトでは机ありのレイアウトとしつつ、開場後の人手の様子を見ながら必要に応じて机を抜くなどの席数コントロールを行う想定をしていました。
しかし、前述の映像・音声の配線・設定トラブル対応に追われた結果、対応が終わったころには想定を大きく上回る参加者のみなさんがすでに着席しており、開演時刻も間もなく、という状況でした。さまざまな理由はありますが、結果的にご参加いただいた皆さんにご迷惑をおかけしてしまったことについて、この場を借りて深くおわび申し上げます。
3. 物流の制限・トラブル
通常、技術カンファレンスでは多数のスポンサー社によってブースの運営が行われるため、ノベルティや装飾の持ち込み・持ち帰りのために大量の荷物を受け取り・発送する必要があります。
しかし、今回の会場では、土日を挟む関係上、開催後に会場から発送する荷物の数に一定の制限がありました。最終的には、荷物の発送時に1社1箱までというかなり厳しい制限が発生してしまいました。会場のルールに従わざるを得ないとはいえ、今後は会場選定の条件の1つとして荷物の受取・発送可能量についても考慮していく必要があると強く認識することになりました。
また一部企画用の荷物では、前日の日時指定で荷物が届かない、というトラブルもありました。具体的にはAmazonからの荷物でした。日常での利用時も、Amazonは予定の日時に届かないことが頻発しているため、利用を避ける方針だったのですが、商品在庫の関係上やむを得ずAmazonで購入したところ、配送トラブルが発生しました。対策としては、基本的にAmazonで購入しない、または事前に会場ではない場所で受け取って会場に持ち込む、などの対策が考えられます。
Vue Fes Japan 2024―新たなステージへ
ここまで振り返った成功、失敗を活かして、今年もVue Fes Japan 2024を開催予定です。
名称:Vue Fes Japan 2024
日時:2024年10月19日(土)
会場:大手町プレイスホール&カンファレンス(旧名称:大手町プレイスカンファレンスセンター)
近年のVue.jsコミュニティではViteやUnJSなど、JavaScriptエコシステム全体に与える影響が強まっています。特定のフレームワークに留まらず、広くフロントエンド領域に役立つカンファレンスになることを個人的に期待しています。
スピーカーやチケット情報は、公式ウェブサイト(近日オープン予定)にて発表される予定ですので、ぜひチェックしてみてください。
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