皆さんは、普段エンジニアやデザイナーが登壇する勉強会やセミナーといったイベントに参加していますか? また、中には運営を任されている方もいらっしゃるかもしれません。
近年ではハイブリッド型イベントをよく見かけるようになりました。ハイブリッド型イベントとは、オフライン・オンラインどちらのスタイルでも参加できるイベントのことです。会場に行かなくても、ライブ配信やアーカイブ動画で内容を視聴できます。
※本記事で「アーカイブ動画」とは、収録したイベントをいつでも視聴できるようにした動画を指します。
今回はクリエイティブコミュニティ「DIST」を参考に、アーカイブ動画の作り方からYouTubeで公開するまでの流れをご紹介します。収録機器や編集時の簡単な工夫も合わせて紹介していますので、動画の作り方に興味のある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
こちらが今回参考にするDISTのアーカイブ動画です。
※DISTとは、職種や技術の垣根を越えてウェブに関わるすべての人を結ぶことを目的とした、DIST実行委員会が主催するクリエイティブコミュニティです。世路庵では会社として運営をサポートしています。
まずはイベント動画の収録方法からご紹介します。段階に分けてご説明しているため、見たい項目があれば以下からスキップしてご覧ください。
イベント動画の収録
ひとまとめに収録といっても、収録するものにはいくつかの種類があります。例えばDISTの勉強会では以下に分けられます。
- PCの映像
オープニング映像やアンケート、セッション用スライドなど進行に必要な情報。 - 会場やスピーカーの様子
ディスカッションのような複数人で話すシーンや、イベントの様子を映したいとき。 - 音声
司会者やスピーカーの声など。
動画に使われる映像は基本的に、スクリーンに出力されているものを収録しており、主に司会者用PC、登壇者用PC、ビデオカメラの3系統の映像を出し分けています。
映像を出し分けるメリットとしては、常に何らかの映像を投影することで何も映らない状況を避けたり、映像出力ケーブルを抜き差しする時間を省略したりすることが挙げられます。
そして、これらの映像を出し分けるために、図のようなさまざまな機器を使用します。それぞれの機器の役割については、この後ご紹介します。
収録機器と映像の出し分け
- スイッチャー
メインの収録と映像の出し分けはスイッチャーで行います。そのため、PCやビデオカメラなどの出力機器はすべてHDMIケーブルでスイッチャーに接続しています。 - モバイルモニター&タブレット
上記のスイッチャーは、連携アプリを入れたモバイル機器で操作できるようになっているため、タブレットで映像を切り替えます。タブレットで操作した結果はモバイルモニターで確認できるため、映像の切り替えミスを防ぎます。
人物映像や音声の収録
- ビデオカメラ
主にスピーカーやパネルディスカッション中の様子を撮影します。基本的にスピーカーの演台に三脚を立てて置き、セッションの始まりと終わりごろや、質疑応答時などに映し出します。動画にする際、スライドだけでなくビデオカメラも使用することで、スピーカーの表情や会場の様子が伝わり、イベントの雰囲気をリアルに感じてもらえるきっかけになります。
同時に、ビデオカメラは音声の収録も担っています。私たちが使用しているビデオカメラは、SONYのデジタルHDビデオカメラレコーダー、HDR-MV1です。
このカメラは、暗いライブハウスでもきれいに撮影でき、音割れを軽減する機能があるため、イベントの収録に適しています。
以上が収録機器の紹介でした。複数の映像を切り替えて収録したい場合には、このような機器構成を参考にしてみてください。
イベント動画の編集:基本編
続いて、編集方法について基本編とより良い動画にするための工夫編に分けてご紹介します。加えて、動画の書き出しとYouTubeへのアップロード方法も記載していますので、編集した動画を公開する際の参考にしてみてください。
アーカイブ動画の編集は、主に次の5STEPで行います。
- セッションごとにカット
- 非公開部分を隠す
- 音声を聞き取りやすくする
- 動画の書き出し
- YouTubeへアップロード
※動画編集にはAdobe Premiere Proを使用しています。
STEP1. セッションごとにカット
編集を始める前に、動画の適切な長さを考える必要があります。
DISTでは複数のスピーカーが登壇するため、各スピーカーのセッションごとに映像をカット編集しています。イベントの形態によっては、冒頭から終わりまで1本にまとめる方法もあります。
※ここで言うセッションとは、一人一人のスピーカーによる講演を指しています。
STEP2. 非公開部分を隠す
時には社外に公開できない資料や成果物など、当日会場でしか見られない情報もあります。このような場面はYouTubeのような公の場には流せません。
その際には、隠すための画像を被せて非公開部分として編集します。
DISTでは上の画像を表示します。この時、表示時間が長いと飽きてしまうので、数秒ほどに短くします。
STEP3. 音声を聞き取りやすくする
次に動画の音声を聞き取りやすくするために、ノーマライズやノイズの調整を行います。
ノーマライズとは音量を正規化することで、音の大きさを全体的に底上げします。Premiere Proにおけるノーマライズの手順については、以下の記事に詳しい使い方が掲載されていますのでご参考にしてください。
また、エアコンや空気清浄機の動作音、会場周辺から聞こえるノイズ、咳払いなど、さまざまな音が収録映像に含まれることがあります。
こうした場合、クロマノイズ除去を使用してノイズを軽減させます。これにより、スピーカーの声がよりはっきりと聞こえるようになり、マイクエコーも抑えることができます。
STEP4. 動画の書き出し
編集が終わったら、動画を書き出します。書き出したいシーケンスを選択して、右クリック→メディアを書き出しを選択します。
書き出しパネルが開くので、そこで設定を行います。注目すべき箇所は、プリセットと形式です。
- プリセット:Match Souce - Adaptive High Bitrate
プロジェクトのシーケンス設定に基づいて書き出し設定を自動で行ってくれます。適切な範囲で高いビットレートで書き出されるため、基本的にはこちらを選択します。
- 形式:H.264
- H.264形式は動画圧縮規格の標準であり、YouTubeへのアップロードはこちらで問題ありません。
設定を確認したら、画面右下から書き出しを行います。
STEP5. YouTubeへアップロード
動画の書き出しが完了したら、最後にYouTubeへアップロードします。YouTubeにアクセスし、右上の作成ボタン→動画をアップロードを選択します。
先ほど書き出した動画をドラッグ&ドロップでアップロードし、動画の詳細を設定します。
- タイトル
- 説明
キーワードを含めると、視聴者が検索時に見つけやすくなります。 - サムネイル
好きな画像をアップロードする他、自動生成されたものから選ぶこともできます。 - 再生リスト
関連動画をまとめておける機能です。例えば、セッション動画を分けて作成した場合は、イベント名の再生リストを作成して動画をまとめます。その後、動画の公開日時や公開範囲を決定し、保存ボタンを押すとアップロードが完了します。詳しいアップロード方法は以下の動画で説明されていますので、合わせてご覧ください。
イベント動画の編集:工夫編
ここからは工夫編です。視聴のしやすさを考えた、ちょっとした工夫をご紹介します。
工夫1. テロップで情報を補完する
テロップで注意書きを加えることがあります。
例えば次は、スピーカーの声と紹介している映像の音が被ってしまった際の動画です。「スピーカーの音声が聞き取れない場面があります。ご了承ください。」と記載しています。
目につきやすいデザインにすることで、重要性をより強調できます。特に映像や音声だけでは伝えきれない情報を補完する際に有効です。
工夫2. 映像の色味を自然にする
収録環境の問題で、映像の色味が実際と異なってしまうことがあります。その際は、編集の段階で色味を調節しています。
具体的には、スピーカーから提供された資料と映像の色を合わせたり、人物の肌の色を自然に見せるように調整したりしています。
工夫3. 細部のボリュームを調節する
さらに、場面ごとに音声のボリュームを調整することで、より自然な表現になります。
以下は音の波形です。セッション動画の最後で拍手が起きている部分を切り抜いたもので、Premiere Proのボリュームレベルを使って音量に強弱をつけています。徐々に音量を小さくして映像が終わるように編集すると、音がプツッと切れる状態を防げます。
ボリュームレベルの詳細な調整方法については、以下をご参照ください。
このようにして完成したのが、初めに紹介した動画になります。
収録機器の用意などは敷居が高く感じてしまうかもしれませんが、業者やイベント会場でのレンタルなど、別の方法で対応することも可能です。まずは簡単に撮影した映像を編集してみて、お試しいただければと思います。
以上、イベントのアーカイブ動画の作り方についてのご紹介でした。
DISTの公式YouTubeチャンネルでは、過去10年分の勉強会動画が公開されています。公開NG場面やテロップの利用など、動画ごとに異なる編集方法もありますので、ぜひ注目してご覧ください!
DIST公式サイト:
DIST YouTube:
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