普段、何気なく目にしている企業やブランドのロゴ。実は、ロゴのデザインに使われているフォントには、企業の「顔」としての大切な意味が込められています。
ロゴは、マークやシンボルを使った「シンボルマーク」と、文字のみで構成された「ロゴタイプ」に分けられます。

この記事では、ロゴタイプに着目し、有名企業やブランドのロゴタイプに使われているフォントの特徴や選定理由を調査しました。
この記事を通じて、ロゴに込められたデザインの背景を理解し、新しい視点を持つきっかけにしていただけたら幸いです。
※本記事で紹介している企業ロゴのベースとなるフォントについては、筆者の調査によるものであり、公式の情報ではありません。
フォントによって与える印象はどう変わるのか?
フォントはデザインの印象を大きく左右する要素です。特にロゴに使われるフォントは、ブランドの個性やメッセージを視覚的に伝える重要な役割を果たします。例えば、あるフォントが温かみや親しみやすさを表現する一方で、別のフォントは信頼感やエレガントさを演出します。この違いが、ブランド全体の印象を決定づけることも少なくありません。
では、具体的にどのようなフォントがロゴに使われているのでしょうか? その特徴を詳しく見ていきましょう。
フォントにはサンセリフ(ゴシック)、セリフ(明朝)、筆記体、等幅、UD(ユニバーサルデザイン)、学参など様々な種類があります。例えば、ファーストフードチェーン店のマクドナルドはサンセリフを使っており、炭酸飲料のコカ・コーラは筆記体が使われています。
引用元:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:McDonald%27s_logo.svg
引用元:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Coca-Cola_logo.svgマクドナルドに使われているフォントは、太く均一な線幅が特徴的なサンセリフで、遠くからでもはっきり見えるようなデザインを演出しています。
一方、コカ・コーラに使われている筆記体は、滑らかな曲線が特徴的で、筆圧の強弱を表現した文字のラインは動きとリズム感を生み出し、見る人にインパクトを与えます。
次に企業ロゴと使われているフォントを見比べながら、ロゴの特徴を紹介します。
Century Gothicを活かした洗練されたデザイン
Century Gothic(センチュリーゴシック)は、Monotype社が1990年にデザインしたサンセリフ体です。特に円形に近いCやO、重心が上側にあるS、そして大文字に見える小文字のuが特徴的で、幾何学的でシンプルな印象を与えます。

このフォントは、メガネブランドのJINSのロゴに使われています。ただそのまま使われているわけではなく、Century Gothicをベースにしながら、ブランドの個性を強調するために独自の調整がなされています。
引用元:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:JINS_Logo.svg実際に使われているJINSのロゴとCentury Gothicで打った文字を比べてみましょう。

見比べるとJINSのロゴはCentury Gothicより、Jの払いが長く伸びており、Sの重心が中心寄りに調整されています。さらに、各文字の間隔を広めに取ることで、どんな距離からでもはっきり認識できるよう視認性の工夫もなされています。
特に目を引くのはJINSの「I」のデザインで、ビックリマーク(!)の形にアレンジされている点です。Iには、お客様にワクワクするような体験をしてほしいというブランドの思いが込められています(引用:株式会社ジンズ | インタビュー | 転職サイトGreen(グリーン))。
Myriadで表現するモダンで親しみやすいスタイル
続いて紹介するのは、Myriad(ミリアド)です。Myriadは1992年にロバート・スリムバックさんとキャロル・トゥオンブリーさんによってデザインされました。モダンでありながら全体的に丸みがあり、柔らかく親しみやすい印象を与えるのが特徴的です。

クレジットカードのVISAのロゴには、Myriadをベースにしたカスタムフォントが使われています。
VISAは、世界中で広く認知されている決済ブランドであり、デザインはシンプルながらも強いブランドイメージを与えるように計算されて調整されています。
引用元:https://merchantsignagejp.visa.com/japan_brand_guidelinesVISAのロゴとMyriadで打った文字を比べてみました。

見比べてみると、全体的に文字が太めで斜体気味に調整されています。特徴的なVは左側の先端が横に伸びているので、VISAが世界中で商取引や決済の未来を推進する企業であることを表現しているのだと考えられます。
さらに、Aの頂点が丸く調整されており、親しみやすいデザインとなっています。斜体気味に調整されたロゴは、決済の迅速さや未来への推進を象徴しているのかのようです。
Myriadは、他にもECサイトプラットフォームのShopifyや、ビジネス向けSNSのLinkedInのロゴにも使用されています。
引用元:https://www.shopify.com/brand-assets
引用元:https://brand.linkedin.com/downloadsHelveticaが生み出すシンプルで信頼性のあるデザイン
次に紹介するのは、欧文フォントの王道とも言われるほど世界中で愛されているHelvetica(ヘルベチカ)です。1957年にスイスのマックス・ミーディンガーさんとエドゥアルド・ホフマンさんが制作したサンセリフ体で、非常にシンプルで視認性が高いフォントとして知られています。

大手電機メーカーPanasonicのロゴにHelveticaは使われています。Panasonicは、Helveticaをベースにしながら、ブランドの個性を強調するために独自の調整がなされています。
引用元:https://holdings.panasonic/jp/corporate/brand/history.htmlPanasonicのロゴとHelveticaで打った文字を比べてみました。

一見違いが分かりづらいですが、「o」や「c」のカーブにより丸みを持たせて親しみやすさを演出したり、iの先端の余白を広めに開けて視認性を高めたりなどの工夫がされています。全体的に狭めの文字詰めをしており、引き締まった印象を与えることで、精密さを強調していることがわかります。
他にも、インテリア雑貨ブランドのFrancfrancやライフスタイルブランドの無印良品のロゴにもHelveticaは使われています。これらのブランドはHelveticaの視認性の高さとシンプルさを活かして、余計な装飾がない、誠実さや親しみやすさを表現しています。
引用元:https://francfranc.io/
引用元:https://www.muji.com/jp/ja/store?srsltid=AfmBOophN8rTgeZXXCllKQxQOAm02HqDmE3CkdSF6WgYk4gvtnc6tgn_Didotが生み出すエレガントな雰囲気
Didot(ディド)はフランスのフィルマン・ディドさんによってデザインされたセリフ体です。細い横線と縦線のコントラスト、シャープなセリフが特徴的です。
ZARAのロゴはDidotをベースにして作られています。Didotのエレガントさを活かし、ZARAのブランドの現代的なイメージが強調されるよう、調整がなされています。
引用元:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Zara_Logo.svg実際に使われているZARAのロゴとDidotで打った文字を比べてみました。

ZARAのロゴはインパクトのある激狭の文字間になっており、視覚的に引き締まった印象を与えます。他にも横線が極端に細く調整されていて、繊細さと上品さを表現していたり、Aの重心を下寄りにバランス調整したりなど、シンプルながらもインパクトを与えるように計算されています。
他にもDidotはファッションブランドのDiorにも使われています。セリフの部分を丸く処理しており、上品さに加え、優雅さが引き立っています。
引用元:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Dior_Logo_2022.svgGaramondが魅せるクラシックな美しさ
続いて紹介するのはGaramond(ギャラモン)です。Garamondは、16世紀のフランスでジャン・クロード・ギャラモンさんがデザインしたセリフ体です。細い線と曲線を組み合わせた、美しく洗練されたデザインが特徴的です。

フランスの化粧品メーカーロクシタン(L’OCCITANE)のロゴは、Garamondをベースに調整されています。
引用元:https://jp.loccitane.com/ロクシタンのロゴとGaramondで打った文字を比較してみました。
見比べてみるとOのサイズが他の文字に比べて大きく調整されていたり、アポストロフィや文字間を心地よい位置に調整されていることがわかります。ブランドのコンセプトでもある、「自然」や「純粋さ」を細かく調整することで視覚的に表現しています。

まとめ
今回の調査で、ロゴタイプのデザインにおいて多くの企業が既存のフォントをそのまま使うのではなく、なんらかの調整をしていることが分かりました。既存のフォントそのままでは企業「らしさ」を十分に表現できず、似通った印象になりがちです。細かい調整をすることで、ブランドの世界観を表現し、他社と差別化を図れるのだと学べました。
本記事がみなさんのロゴデザインの参考になれば幸いです。
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